いちご

2/2
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「出来たよー」 私用の珈琲と依音のココアを持ってリビングに戻ると、依音はソファに寝そべりながら優雅にテレビを見ていた。 クイズ番組をしている。 「全然分かんない」 問題を解けなかったのか、不貞腐れてチャンネルを変える。 次は世界で起きた珍事件を放送していた。 「冷めちゃうから」 そう言って飲み物をテーブルに置くと、依音は「あじゃーす」なんて言いながら、ソファから起き上がって熱そうにコップを持つ。 どこで覚えたのか、変な言葉を使うようになったのも最近だ。 「ふーっふーっ」 ココアを飲みながら、依音はテレビに釘付けになっていた。 恋バナをしてくれる雰囲気ではない。 仕方がないから諦めて私もテレビを見る。 番組では、海外で実際に起こった淡い初恋の物語を再現している。 チラッと依音に目をやると、嬉しそうというか、楽しそうというか、あったらいいなぁみたいな顔をしている。 この物語と自分を重ね合わせているのだろうか。 その姿を見て、なんか見た事あるなぁと思った。 そうだ、私だ。 依音と同じ年齢の時に、私は初恋をした。 と、思う。 あれが初恋だったと思うけれど、今考えたらどうなのだろうか。 私は依音と違って、"恋”というものにとても疎かったのだ。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!