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「出来たよー」
私用の珈琲と依音のココアを持ってリビングに戻ると、依音はソファに寝そべりながら優雅にテレビを見ていた。
クイズ番組をしている。
「全然分かんない」
問題を解けなかったのか、不貞腐れてチャンネルを変える。
次は世界で起きた珍事件を放送していた。
「冷めちゃうから」
そう言って飲み物をテーブルに置くと、依音は「あじゃーす」なんて言いながら、ソファから起き上がって熱そうにコップを持つ。
どこで覚えたのか、変な言葉を使うようになったのも最近だ。
「ふーっふーっ」
ココアを飲みながら、依音はテレビに釘付けになっていた。
恋バナをしてくれる雰囲気ではない。
仕方がないから諦めて私もテレビを見る。
番組では、海外で実際に起こった淡い初恋の物語を再現している。
チラッと依音に目をやると、嬉しそうというか、楽しそうというか、あったらいいなぁみたいな顔をしている。
この物語と自分を重ね合わせているのだろうか。
その姿を見て、なんか見た事あるなぁと思った。
そうだ、私だ。
依音と同じ年齢の時に、私は初恋をした。
と、思う。
あれが初恋だったと思うけれど、今考えたらどうなのだろうか。
私は依音と違って、"恋”というものにとても疎かったのだ。
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