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そして日曜日。
依音と私はガトーショコラのカップケーキを焼いた。
キッチンはお菓子工場みたいに甘い匂いを漂わせている。
何年もお菓子作りなんてしていなかったから、容量は悪いしケーキは膨らまなくて失敗もするしで散々だった。
へとへとになりながらも、何とか形にはなったけど。
「何とか出来たわね」
「よかったー!」
キラキラ、顔を輝かせている依音の顔をみて、私はホッとする。
「まだラッピングが残ってるけどね」
いたずらっ子ぽく言ってみる。
「うへぇー、もう無理」
なんて言いながらも、やっぱり嬉しそう。
ラッピングに使う包装紙を選ぶ顔もキラキラしている。
出来たカップケーキは計10個。
「えーと……恵美、優愛、早苗、凛、真奈、あと……」
渡す半数の名前を言った後、依音は固まった。
「どうした?」
「あと……色々!」
少し紅くなった頬で察する。
きっと渡す男の子の名前を思い出したんだろうな。
「明日忘れない様に早く袋にいれないと!」
「はいはい」
慣れない手つきで包装をしている姿が愛おしい。
私はキッチンに残った形の悪いケーキの破片を口に入れる。
うん、美味しい。
きっと誰が食べても美味しいと言ってくれる。
可愛く包装が出来た依音は、満足そうに笑っていた。
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