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4 侵入者、現る
東京での研修も無事終了し転勤からはや2ヶ月、仕事もプライベートも慣れてきた頃です。メシは相変わらずジャンクに近い簡単なものではあったけど、台所がないからどうせ仮住まいと割り切って勝ったレンジと一人用のホットプレートで簡単な調理。意外にどちらも万能なので基本なんでもできてしまいます。ネットで調べたらほぼできるから現代のメディアはスゴい。
寮室に戻ったその時です。
夜も暗いんです、ワタクシが部屋に入るまで、誰もいるはずがないんです。それなのに何かが動いたような気がしたんです。
「あら、窓閉め忘れてたっけ……」
だんだん夏になって来たし窓くらい開けるし、普段のワタクシなら忘れることも多い。まあそういうことでしょう。電灯をポチッと。
明らかに影が、動いた。
窓は閉まっている、動いたのは床面だ。経験が教える危険、強制的に反応する逆毛……。
「コレは、もしや……、まさか……!」
築年数はワタクシと同い年くらいの独身寮、仮住まいが前提だから大事にも使わないボロ物件、そしてガチャガチャした都会の下町……、ここまでのデータが導く床面を動くソレとは。
「OMG」
見たくないけど見てしまった。そして、あんだけ防御線張ったのに、彼奴の侵入を許してしまったのです……
G
ですよ。床面をカサカサ這い回るアレ。
おそらく好きな方はいらっしゃらないでしょう。ワタクシもです。
あの色、あの艶、あの動き
どれをとっても苦手なんです。子どもの頃、つまりは昭和の終わりごろはまだ見かけましたが、動き回る上に飛んでホバリングする姿を見た時に固まって動けなかったくらい苦手なんです。もし彼奴が身体に触れようもんなら……、
ヒィィィ、
たぶんメデューサに睨まれた如くその触れたところから石になると思います。
近年では衛生環境の向上や、本宅はマンションの上の階だったので、自分の住環境で見かける機会はほぼ皆無でした。久しぶりに見たその姿、蘇るトラウマ……。
「だがしかし、コイツを退治せんことには安心して住まれへん」
そこで手にしたアルコール除菌スプレー。姿は見たくないけれど、今ここで使える最適な武器といえばこれだ。
「信じろ、オレ」
無心で噴射、弱る宿敵……。
とりあえずは勝利するも、一匹見たら10匹はいるという恐怖に怯えながら部屋中を検索。
セットした○キ玉、つまりは防御線を再チェック。
「ふぅ……」
どうやら侵入者はこれだけのようだ。とりあえず一安心、
……と言いたかったのだが。
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