7 滝汗

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7 滝汗

 せっかくカネ払って運動させてもらってるんだ。元を取らんと負けた気になるのは貧乏育ちの悲しい性。最初の2ヶ月は無料といへど、4ヶ月は続けてねという縛りがある。せめてそれまではがんはろうじゃないか。    サウナの延長で始めたジム通い。コンセプトは無理しない。筋肉痛なったら3日の足止めになるから、そうならないように毎日カラダが悲鳴を上げない程度に締め上げる。これだけは絶対に守ってやってると、  当初は、    30分走 距離にして約5km    水泳  平泳ぎ主体で1km    自転車 プログラムで40分    筋トレ マシンで少々    サウナ およそ90分くらい  くらいでした。まず走る。泳いだり自転車漕いだりした後はまず走れない、しんどい(逆はできる)。それでも、毎回毎日続けていくと、これができるようになるんです。 「ペース上げよかな?」 「いやいや、無理はしない」  といった感じでペースはできるだけ上げないで、毎日続けてもそれが無理のないペースになれば、ほんの少しだけペースもしくは距離を上げます。たぶんイケそうなところで止めておくのがコツ。  どんな感じかとイメージすると、そうそう。忍者の子どもは生まれた時に裏庭に木を植えてそれを飛び越していく話知りません?いつの間にやらその木が大木になってても飛び越えられるっての。それです、それ。  ……ホンマに忍者の家ではそんなことやってるの?  そこは聞く勿れ。  最初に決めたことはここで何度も書いてますが、最重要課題は続けることです。ペースは無理なら減らす、イケるなら上げる。次の日しんどくなって続かないレベルまでしない。これは前編でもあったように、守り続けることで出た結果なので、そこは迷いませんでした。  ペースは少しずつ、本当に少しずつ上げていきました。   5km30分切った、やったー   1km泳げるようになった、やったー   筋トレ、昨日より重いもの上げる   ことができた、やったー  ……昨日の自分より一歩いや、一足分くらい前を進むつもりで、とにかく行ける日は毎日通う。火曜は休みで通えない。そしてとにかく続ける、そんな生活がふた月経った頃です。 「おーし、今日は走るでぇ」  いつものようにジムへ入り、準備してランニングマシンに乗る。  最初は30分走るのがやっとのくたびれたカラダ。それが少し伸び、少し速くなり、   少しずつ、    少しずつ、     少しずつ……  続けて続けて続けた結果。  なんと1時間完走できたんですよ。30分で5kmは走りましたが後半しんどくなって最終的にはペースを下げて10kmは到達しませんでしたが、それでも1時間走り切ったのですよ。  その時です。カラダに変化が現れたのは! 「いや〜しんどかった……」  止まったマシン。下を向いてベルトを見たらなんと水浸しになってるのです。そしてワタクシを見る周囲の方々…… 「何か?ワタクシになにか付いてます?」  じゃない。服までが水浸しなんですよ。これぞまさに     滝汗  ある一定の日が過ぎた頃から走れば毎日滝汗になるんです。  1時間走り切り、マシンから降りてモップで床掃除したら化粧室に直行。洗面台の前でシャツを脱ぐ、そしてねじってギューっとすると……、これがまさに      滝汗 なんです。絞れるくらいの汗が出るようになったのです。  それから筋トレするのにマシンに座ります。ジム内には10種類のマシンがあって、腕や脚、腹筋などそれぞれを鍛えることができます。  自分が選んだ方法は、   付加かけて1分でどれだけできるか  筋持久力よりも筋肉の瞬発力をつけようと決めました。持久力は散々走ったり泳いだりするからいいかな、と思ったわけです。  マシンに座り付加かけて、例えば腹筋。タイマーセットしてよーいスタート。   ウリャウリャウリャウリャウリャ……  その日の調子にもよりますが1秒に1回いかないくらい。1分で大体50ちょっとできるようになった頃です。 「あー、しんど……」  立ち上がるとシートが     滝汗 なんです。どれくらいの量かって聞かれたら、ホンマにプールで泳いだあとくらいの量なんですよ    来たよ、キタよ、キターッ‼︎  これが職場の後輩が言ってた滝汗フィーバーです。トレーニングも一定のラインを越すと減量のグラフが急上昇するそうで、これまでダラダラやってきたワタクシだけにそんなことは一度もなかったところに、人生エエ年になって初めて実体験できたんですよ。これまでの半生に反省。  止まらない滝汗フィーバー、ここまできたらもはやZONEゾーン。走っても滝汗、筋トレしても滝汗、泳いでも滝汗(知らんけど)、サウナでも滝汗、それは普通。 「もうそろそろエエやろ」  1日のトレーニングがすべて終わり、服を着る前に見る鏡の自分。劇的とまではいかないまでも、確実にお腹のぷよぷよは減っている。    これまで怖くて乗ってなかった体重計。ジムなんだから当然測りは置いてます。とうとうコレに乗ってみる時がきたんです。    ドキドキ、ドキドキ 緊張の瞬間、高鳴る鼓動。ちなみに、ジム通い始める前のスペックは     身長 171.4cm     体重  71kg前後 でした。測りに乗ると数字が動く、そこで表示した数字は……  滝汗ZONE、これは達成点ではなくまだまだ続けられそうな感じがしました(ちょっと得意気)。   つづく
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