2 一本の電話

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2 一本の電話

 当時のワタクシは仕事の都合で自分の育った街ではなく、ある地方に住んでました。  そんな中、中学からつるんでいる友人から連絡があったのです。当時もリアルタイムでやり取りする電話よりもメールで送りつけての対応が主流の時代でしたから、滅多に掛かってこない電話に少しビックリしました。  その日は仕事もなく、子どもをあやすくらいのタスクしかなかったので電話に出ることができたのです。 「おう、久しぶりやんか」 「ホンマやなぁ……」  様子がちょっとおかしい。 「同じクラスに○○っておったやろ?」 「ああ、ジャイアンな」  共通の同級生、私が呼んだのは当然本名ではなくてあだ名です。中学の時、そんなあだ名の「ジャイアン」がいたんです。  どんな奴かというのは想像通りですが、違うのは歌はあまり歌わなかったところでしょうか……。  見てくれも然り、当時からなかなかヤンチャな彼は私や電話の友人含めて怖いからできることなら近づかず、でも、そんな体格のジャイアンだから、とにかくそこにいれば目立つんです、彼のやらかすことも含めて。  そんなヤンチャな彼は中学出て相撲部屋に入門した。四股名は聞いてたので場所中は郷土力士の欄をたまに見ていたんですが、確か三段目か幕下くらいまでは行ってたっけ。当時であれから15年、そのジャイアンには会ってない。もう直接いじめられないから、それはそれで同郷のよしみで応援はしてた。  で、わざわざ電話で話すほどでもない同級生が話題に上がった意味が分からない。あるとしたら何かやらかしたのか?、それも長く会ってもないし少し弱い。 「ほいでよ、ジャイアンがどうしたん?」 「アイツ、両脚切断したらしいぞ」 「えーーっ!」  そりゃ電話で話す話かもしれないな。  友人は最近地元で同窓会があったらしいんです。ワタクシは地方にいる故参加出来なかったんですが、その時の一番な話題がそれだったそうです。 「え、何?ケガしたの?」 「いや、そうじゃないらしい」  角界の力士だから毎日激しい稽古もするだろう、それ故に大怪我もするだろう。ワタクシはてっきりそういうことかと思ってたのですが、どうも原因はそうではないらしい。 「アイツ、糖尿患ってたみたいでよ……」  ジャイアンとつるんでた子分的な存在の同級生(←彼のあだ名は言わずもがな)の話では、ジャイアンは糖尿病を患ってたみたいで、両脚の状態が悪くなっていたにも関わらず治療のタイミングを失った結果脚が壊死してしまったようで、気づけば手遅れだったそうだ。 「メタボは最大の敵らしい」  という言葉でスネ夫の説明は終わったらしい。  ジャイアンには気の毒な話だろうけど、それは自分にも言われてるような気になったのです。そういう友人とも思えば1年以上は会ってない。クニに帰った時に会ったら多分言われるに違いない。 「どうしたの?そのカラダ」 とーー。  太るとリスクが高くなる。今ならまだ対処出来るかもしれない。ベルトの穴を土俵に例えたら、俵に足乗ってるくらいの崖っぷちだ。身体が重たくなってきたユルい毎日で聞いた衝撃。この先どれだけ続くかは分からないが、重い重い重〜い一歩を踏み出してみようと思ったキッカケにはなったのです。    つづく
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