塵に積もる美少女たちの微笑み

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 口や鼻から吸い込まれた微細なウレタンフォームの塵が肺の機能を低下させていき,食道から胃,腸へと入り込んでいった塵が血液に運ばれて全身を侵していった。  細かい作業をしていると目が霞み,指先が震えるようになるとフィギュアの製作に今までの倍近い時間が掛かるようになった。  部屋に飾られた大量のフィギュアがまるで心配でもしているかのような気がして,作業をしながらこれまで何体のフィギュアを製作して,何人のファンの手元に届いているのかを想像した。  そして鏡に映る自分の姿を見て,女の子の等身大フィギュアを製作する自信も体力もなくなっていることに気づき,鏡に写る自分自身に通常通りの生活を送るよう何度も伝えた。  できるだけ通常通りの日常を過ごしたが,日に日に頬がこけ,目の下の隈はメイクでもしているかのように濃く,気がつくと鼻血が垂れていた。 「ヤバイやつじゃん……これ,なんの病気だよ……俺……大丈夫かな」  鏡を見ながらため息をつくと,ゆっくりと深呼吸をしてから等身大フィギュアの製作を最後にして病院に行くことを決めた。
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