中学生

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中学生

 英雄(ひでお)くんと話さなくなって、もうどれくらい経つのだろう。声を聞くこともほとんどなくなってしまった。英雄くんが僕の人生に残したものは、大きな傷のようになってしまった。いつの日か治るのかもしれないけれど、今はまだ、痛い。  いつからか遠く離れてしまった英雄くんは、もう僕を助けたあの日のことなんて覚えていないのだろうか。僕と一緒に過ごしたあの時間を、失くしてしまったのだろうか。僕は今でも大切にしているのに。  机の中からボロボロになった箱を取り出す。幼い頃から気に入った写真を入れている、大切な宝箱だ。運動会や宿泊学習、修学旅行や学芸会の写真に混じって、僕と英雄くんのツーショットが出てくる。これは小学三年生のときのものだ。母が遊園地に連れて行ってくれたのを覚えている。そこで見たヒーローショーの内容だって、全部覚えているんだ。英雄くんと一緒にある記憶は、全部宝物だから。  ぽと、と、ひとしずく落ちる。写真にできた水たまりはすぐに、スーッと重力に従って床に消えた。  あんなに幸せだった。当時だって、今だって、僕は英雄くんが好きだ。大好きなんだ。どうしてこんなに遠くに、離れてしまったのだろう。
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