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小学五年生
英雄くんのおかげで、あれから僕のいじめはほとんどなくなった。それでも――だから、かもしれないけど――主犯はまだ僕のことを嫌っているらしく、たまに目が合っては睨みながら悪口を言ってくる。でも、僕はもうそんなことでは揺らがない。怖くない。だっていつも隣には僕のヒーローがいるんだから。
「太田さ、最近明るいし元気だしさ……俺、嬉しいよ」
満面の笑みを浮かべている英雄くんを見て、胸がドキンと跳ねた。英雄くんが笑っていると、僕も嬉しい。
「どしたの、急に」
「もしさ、もしもだよ? もし、あのときの俺に勇気がなくて見て見ぬふりしてたらって、たまに考えるんだよ」
帰り道がもう、少し暗い。この時期は日がすぐに落ちてしまうから、何となく、英雄くんと一緒にいられる時間も短くなっているような気がして、ちょっと寂しい。
でもこの空気が好きだ。澄んだ空気に英雄くんの声が、言葉が、綺麗に列を作って並んでいる。僕の周りを回っている。
「でも、英雄くんは、僕を助けてくれたよ」
眉を下げて笑う英雄くんは、何を考えているのだろう。僕が触れたらそのまま雪みたいに融けてしまいそうで、それだけが怖くて英雄くんに触れられなかった。いなくならないように抱き留めてしまいたかったけど、僕の体温で消えてしまったら嫌で。
「そうだな。だから太田と俺は親友になったんだもんな」
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