小学五年生

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 そう言っていたのに、英雄くんが僕と一緒にいる時間はどんどん短くなっていった。  僕が英雄くん以外に友だちを作ったのがいけなかったのかな。僕が他の子たちと遊びに行ったのが良くなかったのかな。僕が女子と仲良くしているのが悪いのかな。考えれば考えるほど、底なしの沼にはまっていくみたいだ。教室で目が合っても、一緒に帰ろうと誘おうとしても、校外で見かけても、僕と英雄くんが会話を交わすことはなくなってしまった。  ――どうしてこうなったんだろう。  児童玄関で空を見上げる。小雨が降っている。リュックから折りたたみ傘を取り出したところで、さっと風が駆け抜けたのを感じた。その影を目で追えば、英雄くんがリュックを頭の上に乗せて走っていったのが見えた。英雄くんは校門を出てすぐ左に曲がった。  ざわざわと後ろから人が来る音が聞こえる。ここにいたら邪魔になる、わかっているのに僕は動けなかった。  少し前までだったら「太田、傘持ってんだ。俺、持ってないから、入れてよ」なんて勝手に入ってきていたはずなのに。僕に笑いかけてくれていたはずなのに。  雨のせいで空気が冷えている。肺からすうっと体温が消えていく。僕はそのまましゃがみこんで、立ち上がれなくなった。誰かが僕を心配して声をかけている。肩を叩いてくれている。背中をさすってくれている。でも全部、何も感じない。僕の好きなあの気配が、どこにもない。  ――あぁ、そうか。わかった。  傘なんて置いて僕は雨の中、走り始めた。頬を伝っているのが涙なのか雨なのか、わからなかった。  ――僕は英雄くんが、好きなんだ。
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