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教室の隅っこ、一番後ろの窓際。英雄くんはいつも外を見ている。外に何があるのか、僕にはわからない。たぶん僕とは全く別の景色を見ているんだ。だから、僕は英雄くんの視界に入ることができない。
ふと、英雄くんがこっちを向いた。目が合う。英雄くんはハッと目を見開いて、すぐに顔を逸らした。僕の微笑んだままの顔は、どこへ向けたら良いのだろう。
そんな日常に耐えられなくて、僕は行動することに決めた。英雄くんが僕のことを嫌いになったのなら仕方ない。僕は思い出に浸りながら、傷が癒えるのをゆっくり待つことにする。でも、そうじゃないなら。何か僕と一緒にいられない理由があるなら――いや、そんなものは、ないだろうな。
「ねえ、英雄くん」
放課後、人気の少なくなった廊下で、僕は英雄くんの袖を掴んだ。
「どうして僕らは、こうなったのかな」
頬がゆっくり濡れていくのがわかる。泣きはらした目はヒリヒリと痛む。顔を見ることができない。どんな感情を浮かべているんだろう。迷惑かな、嫌かな。でも、それでもいい。僕はもう覚悟を決めたんだ。
「……ごめん、俺が悪かった」
英雄くんは震える僕の手を握ってくれた。それから引っ張るようにして、別の教室に移動した。旧校舎の、もう使われていない音楽室。
廊下を幾度か確認した後にパタンとドアを閉めて、英雄くんは短くため息を吐いた。それから窓を開けて、新鮮な空気を肺に吸い込んだ。
「――好きだからだよ」
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