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「雪降ってるの、初めて見た……!」
私は部活の帰り道、空を見上げながら一人で呟いた。
私の住んでいる地域では全く雪が降らないため、本当の雪を見たのは今日が初めてだった。
遊園地の人工雪とは違う嬉しさに胸を躍らせる。
子供のようにはしゃぎだしたくなるが、周りには疎らに人がいるため、その感情を抑えることに必死だった。
(彼も、この雪見てるのかな?)
私は、不意に彼のことを思い出してしまう。
(でも、まだ部活だよね……)
私は彼に電話をしたい気持ちを抑えて、握りかけたスマホを再びポケットにしまった。
(あ〜!彼にこの雪を見せてあげたい!二人で見たいな……)
頭の中には彼のことでいっぱいだ。
ブルルルル…ブルルルル……
ポケットにしまっていたスマホが震える。
(どうせ、お母さんとかでしょ……)
と思いながらもスマホを手にすると、表示されていたのは彼の名前が。
私は急いで電話に出た。
「もしもし!部活お疲れさま。雪ふってるね」
「もしもし〜。元気そうだね。うん。雪降ってるね。なんか、不意に会いたくなって」
「うそっ!?私も。会いたくて仕方なかった」
「ほんと?会いに行っていい?」
「うんっ……いいよ!」
「ありがと。今から行くね」
私は、ニコニコ笑顔で電話を切った。
雪が降ってくれてよかった。
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