日常と非日常の境界線

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 肌を刺すような鋭い空気が辺りを覆う深夜一時頃,白い高級な四輪駆動車が都会の喧騒から逃れるように高速道路を走っていった。  ハンドルを握る古澤慶典(ふるさわよしみち)は,どの出口から降りるかを決めずにアクセルを踏んだが,心の底から一人になりたいという気持ちが溢れ出すのを抑えられないでいた。  満点の星空の下で山々のシルエットが古澤に覆いかぶさるように迫ってくると,いままで使ったことのない出口を敢えて選び一般道へ滑るように降りた。  そのまま車は街灯のない道を静かに走り,月明かりに照らされた真っ白な世界に呑み込まれているような錯覚に陥った。古澤は何かに警戒するかのように何度もミラーで後続車がいないか確認をしながら畑の間を走って行った。  車は山を目指して細い道へと入って行くと,細く曲がりくねった道を勢いよくのぼって行った。
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