地に埋もれる永遠の支配

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 その年の夏はとくに激しい雨が降り注ぎ,山奥から唸るような地響きが数日間続いたある日,ガラスが割れるような甲高い音が地中深くから鳴り響くと,本家の大きな家がそのまま横に滑り出した。  無理な採掘によって空洞化した山は割れ,雨水とともに土砂が流れ出し,本家を中心に周囲の建物を下から掬い上げるようにして地鳴りとともに谷底へ呑み込んでいった。  途中に祀られた神社も一瞬で巻き込まれるようにして流されていくと,谷底に滑り込み,上流から押し寄せる土砂が家もその中ににいる人にも覆い被さって勢いよく地中深くへ押し込んだ。  降り注ぐ岩と岩がぶつかり合い甲高い金属音をあげながら,土砂に流されていく人々の皮を砂利や石が引き裂き,肉を削いだ。肉塊となった人々の身体は岩や家屋に挟まれ潰されながら,真っ黒な川となって暗闇に消えていった。  この年の地滑りや土石流はとくに激しく,地形を変え,元々あった池は消え,別の場所にいくつもの水溜まりをつくった。その後も削られた山肌は崩れ続け,絶えず石や岩を降らせ,谷底には土砂が降り積もった。
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