地に埋もれる永遠の支配

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 それから数年間,定期的に訪れる豪雨によって山は崩れ土石流が集落を呑み込み,僅かに残された山村一族の命を削るように奪っていった。  土石流は人の手によって変えられた自然を取り戻そうとするかのように山を崩し,地形を変え,近隣に住む人間の命を奪い続けた。新しくできた谷底の池には,数えきれないほど死体の山が沈んで消え,年を重ねるごとにかつて栄えた銀山の形跡を消し去っていった。  やがて第二次世界大戦を迎え,戦後は貯水池として近隣の住民のために田畑に水を供給し,水不足になると池の水を濾過して飲料水として利用されたが,古くからその土地に住む者にとっては池の水を口にするのは抵抗があり,最後まで水を拒否して命を落とす者もいた。  その後,時代とともに悲惨な話は尾ひれを着けて拡まり,貯水池からは女の悲鳴と泣き声が聞こえる怪談話として拡散し続け,いつの間にか心霊スポットとしても全国的に有名になっていった。  インターネットが普及する前は,夏になるとテレビの心霊特集で取り上げられ大勢の若者が肝試しにくるようになったが,毎年,何人かの若者が足を踏み外して池に落ちて命を失うため地元の警察でも問題になっていた。
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