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痩せ細っていく雄一の様子がおかしいのは周囲の年寄りたちの目にも留まり,さまざまな噂話が飛び交った。
かつて貯水池で溺れ死んだ子供の呪いだの,貯水池に棲む妖怪に魅入られただのと話は膨らんだが,ほぼ全員が池に沈む一族に呼び寄せられたに違いないと口を揃えた。
田舎の噂話はすぐに雄一と沙月の耳にも入り,悩んだ末に二人は市役所の市民相談情報課の窓口に貯水池とその歴史について話を聞きに行くことにした。
そして二人が市役所を訪れると,事前に電話で伝えていたこともあり,対応した高槻が集めた古い資料を積んだ個室へと二人を案内した。
「まさか,こんなに早く相談に来るとは思ってもいなかったよ……」
「え……? 何か知ってるんですか?」
「あんた……山村一族だろ……聞こえるんだろ?」
高槻は聞き取りにくい声でボソボソと呟くと,補聴器の位置を軽く直してからゆっくり部屋のドアを開けた。
「さて……俺の知ってることは話してやるが,正直なところ,信じがたい内容かも知れんからな。俺を嘘つき呼ばわりだけはしないでくれよ……」
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