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高槻は雄一と沙月に古い革製の大きなソファを勧め,自分も古いひび割れた革製の椅子に腰掛けた。
「さて……あんたに必要な情報はこれだな……」
高槻はテーブルの上に置かれた古い資料をゆっくりと開くと,指先に唾をたっぷりつけて,ページをめくっていった。
二人の目の前でページの端を唾で濡らされていく資料は,モノクロの写真が大量にファイルされたアルバムのようなノートだった。
「ほら,この写真。あの池のほとりで釣りをしている写真だけどな,生き残った山村一族だよ。横にいるこの小さな女の子,俺の祖母の華子だ」
「え……?」
市役所の一角に飾られた写真と同じものがそこにファイルされ,写真の下に写っている人の名前や日時が手書きで書き込まれていた。
「あの……のどかな光景ですね……」
雄一は古い写真を見ながら,高槻に視線を送ったが,高槻はその視線を無視するようにページをめくった。
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