地に呼び戻される

　何枚か池の写真が続くと，突然景色の違うセピア色の写真がファイルされ，同じページに新聞の切り抜きが大量に貼り付けられていた。

「これこれ，あの一帯の池が土石流(どせきりゅう)で埋まったときのやつだ……記録だと昭和になってすぐだな」

　セピア色の写真の池は完全に姿を消し，大量の土砂に埋め尽くされていた。

「俺の祖母が産まれた頃の出来事だ。この時期，記録的な豪雨が続いてな。記録では，ちょうどお盆だ。田舎の豪商だった山村一族は，本家が山の中腹にあったそうだ。大量の雨が山に染み込み，山が崩れ，お盆に集まっていた山村一族ほぼ全員を池の底に引き摺り込んだと記録されている」

「はぁ……あの池ってことですか？」

　新聞には三十人以上の死傷者が出て，山村一族は全員土砂に呑まれて死亡したことが見出しになっていた。

「いや，今の池は土石流の後にできた別のものだ。まぁ，みんな埋まっちまったんで，この土地に山村の本家はいないんだよ……その後も何度か土石流があってな。一族のなかには，たまたま助かった者もいたらしいが，お役目を果たせなくて，みんな気が触れて死んじまった。俺のお袋もそのうちの一人だ」

「お役目……？」