地に呼び戻される

14/17
18人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
「俺の祖母は高槻に嫁に行って,そこで産まれた三男の……光雄の息子が俺だ。この土地にいるから自分の出生を知っているが,もし,よその土地に行ってたら俺に僅かでも山村の血が流れてるなんて知ることもないくらい山村とはかかわりがない」  再びドアが激しく叩かれ,悲鳴と泣き叫ぶ声が響き渡った。 「こんな俺ですら……山村一族の声がこうやって聞こえるんだ……四十年ほど前にフェンスで閉鎖されるまでは,もっとハッキリ聞こえたんだけどな……」  高槻は指を舐めながらページを捲ると,付箋の貼ってあるページを雄一に見せた。  そこには,この土地では池の底に降り積もる土砂を定期的に取り除いてやらないと,次々に村人が死ぬという記録が残されていた。  昔から誰が死ぬと山村に使用人として連れて行かれると言い伝えられ,死者が出る度に村人全員で池を(さら)って,底に溜まった枯れ木や土砂を取り除く習わしだった。  今では土砂やゴミを取り除くのも定期的に山村の遠縁が重機を使って無料(ただ)で行い,土砂が溜まってきている声を行政に伝えるのも山村の血を引く者の仕事だった。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!