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「池を管理する役目を担っていた山村の生き残りが二十年ほど前に死んだんだよ。まぁ,都市開発が始まってすぐに自ら命を絶ったんだけどな。で,最近また池の底から声が聞こえ始めてな,そんな時にお前がこの土地に来た」
写真に写る一族たちが雄一を見つめて,苦しそうに顔を歪めた。
「呼ばれたんだよ……高槻の俺じゃなく,より強く山村の血を引くお前さんが……。ただなぁ,実はこの声を和らげる方法もあるんだ……」
「和らげられるんですね……俺は何をしたらいいんですか?」
沙月が不安そうに雄一の手を握りしめた。
「簡単だよ。死んだ俺のお袋も,祖母もそうしたように,お前も子供を作ればいい。田舎で女の役目といったら子を産むことだ。そうしたら,その苦痛は薄まるぞ。なぁ,奥さん。協力してやれば旦那も少しは楽になるぞ」
雄一は両手で耳を塞ぎながら,頭の中で響き渡る悲鳴と泣き叫ぶ声に呑み込まれていくような気がして悲鳴をあげた。
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