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頭の中に降り注ぐ刃のような悲鳴と苦しみ泣き叫ぶ女子供の声が響き渡り,身体の中に負の感情が満ち満ちていった。
なにもない天井を見上げると,空から降ってくる山村の怨念が降り注ぎ,部屋いっぱいに埋め尽くした。
沈められて眠る祖先の魂が苦しみ助けを求めている気がして,この土地に呼ばれたことを理解した。
「苦しい……痛い,怖い,ここは寂しくて,暗くて,闇の中で永遠に逃れられない地獄の苦しみを与えられてるんだって……ずっと俺に囁いてくる……」
「え……? ちょっと,ねぇ,雄一,どうしたの? 怖いんだけど。なんなの? ねぇ!」
高槻は補聴器を外すと笑顔を見せた。
「奥さん,旦那さんに協力してあげてな。彼はこれから先,山村一族の呪いを聞き続ける。それは決して楽なことじゃないんでね。そしてあんたは元気な子供を産み続けるんだ。なかなか大変だぞ」
高槻が開いた資料のページには,死んだ山村一族の名前と性別,そして年齢が書かれていて,全員ではないが一族の集合写真にはそれぞれの顔だけが酷くピントの外れた状態で醜く歪んだ顔で写っていた。
「ねぇ,これって,なんなの? 気持ち悪い!! ねぇ,雄一,この写真なんなの? 子供ってなに!?」
セピア色の写真の中で苦しむ雄一の姿が写し出され,高槻は嬉しそうに指でなぞった。
「奥さん……ここにはずっと……何年も俺がいた場所だよ……高槻である俺が山村の代わりに……だけど,ほら,いまは旦那がいる……」
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