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その日の晩,池が靄に包まれると,新興住宅地一面が真っ白になった。田舎の人たちはほぼ全員寝ている時間だが,雄一は寝付けず,沙月を起こさないように注意しながらベッドのなかでスマホで動画を観ていた。
真っ白な靄に包まれたモダンな家々は,月明かりの下で雲の中に浮かんでいるようにも見えた。
しばらくすると,静かに雨が降っているような音が聞こえてきて,雄一はうんざりするようにため息をついた。
「雨なんて天気予報で言ってなかったのに……明日,出勤の時には止んでるといいな……」
雨のような音に混じり,濡れた脚がペタペタと辺りを徘徊する音がしたが,雄一はそれも雨の音だと思い込み気に留めなかった。ペタペタと音を立てる足音は,最初は一人だったがすぐに二人,三人と増えていき,あっという間に十数人の列ができていた。
一列になって行進する足音が雄一の家の前で止まると,靄の中に人影が映り,傷だらけの真っ白な汚脚が見え隠れした。
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