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次の晩も,またその次の晩も家の周りを何者かが素足で行進しているのをベッドのなかで聞いていたが,確認しようとするといつの間にか眠りに落ちていた。
『お前は継ぐ者か……? 苦しい……潰れる……暗い……。お前は聞こえる者か……?』
夢の中で聞こえる声は,日に日に大きくなってゆき,雄一の眠りを酷く浅くした。そして目が覚めると夢の内容は何も覚えてはいなかったが,真っ暗な闇に堕ちていく不安と恐怖が微かに残り,身体のだるさが増していった。
出勤のために顔を洗い,洗面台で鏡に映る自分の姿を見ていると,心のどこかで眠りが浅くなってゆくのとあの池とかかわりがあるんじゃないかと,なんとなく不安に感じた。
「なんなんだよ……あの池になにかあるのか……?」
日に日にやつれていく雄一を見て,沙月も不安になっていたが,仕事が忙しいのか,新しい土地の水に問題があるのかわからず,病院に行くのを勧めるのが精一杯だった。
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