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数ヶ月前からは考えられない賑やかな一家団欒にほっと心が和む。
義妹とはじめた新生活は順調そのもの。僕たちはもうすっかりと誰の前に出しても恥ずかしくない立派な兄妹で家族だった。
「ごちそうさま!」
「おそまつさまでした」
食事を終えた咲ちゃんが僕に手を合せる。
空になったお皿を手にして立ち上がるとそのまま台所へ。食器は各自で洗うのが、遠原兄妹の二人暮らしのルールだ。といっても食洗機があるので軽く流すだけ。
手早くお皿を洗った咲ちゃんは、牛乳入りのコップを手に戻ってくる。鼻歌を奏でながら僕の横を通り過ぎると、彼女は窓に向かって置かれている二人がけのソファにどっしりと腰掛けた。
樟葉の街を映し出す掃き出し窓の前には50型液晶テレビ。
すぐにその中でYouTubeアプリが立ち上がる。
家族共用アカウントの登録チャンネルから、アイドルVTuberを選択すると、咲ちゃんはくぴくぴと牛乳を飲んだ。
夕食後の動画視聴はここ最近の咲ちゃんの日課だ。
「お兄ちゃん、昨日のシュバちゃんの地獄企画だけど、ここで見ていい?」
「いいよ。最近よくその子見てるね」
「うん。ボーイッシュな子だからキャラの勉強になるんだよね」
「どういう勉強?」
「男友達のノリで親しくなってね、不意打ち気味にメスを出すムーブが今はつよつよなんだ。『お兄ちゃん、咲も女の子なんスよ……』って!」
「よくわかんないや。じゃぁ、先にお風呂入っちゃうね」
「はーい」
ソファーの背もたれからひょいと手を出して咲ちゃんが振る。
ちょうどそのタイミングで僕もシチューを食べきった。
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