第1話 ハロー、残念なお兄ちゃん

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◇ ◇ ◇ ◇ 「お兄ちゃん。ストロベリーとチョコ、どっちがいいかな?」 「うーん、どっちって言われても。使うのは咲ちゃんでしょ?」 「えーっ! けどやっぱりムードがあるじゃない! そういうことしてる時に、お菓子の匂いがしたら嫌とかないの?」 「……まぁ、その、あると言えばあるかな」  手にストロベリーとチョコの『それ』を持って義妹は悪い顔をする。  いや、エッチな顔と言うべきかもしれない。  肘でこつりと僕の脇腹をけば「あるんじゃないですかお代官さまぐへへ」という含み笑い。リアクションに困って、とりあえず「へへぇ」と笑っておいた。  場所はコンビニ。  僕たちが住んでいるマンションの真ん前。  マンションの住人を狙い撃ちにしたようなお店。  入り口向かってすぐの列。トイレとATM手前の位置に僕たち兄妹は立っている。  幸いにも店内に人は少ない。  さて。  咲ちゃんに「お兄ちゃん」呼びしてもらえるほど仲良くなるには、僕たちの間にもう一悶着あるのだけれど――それは一旦置いといて。  まずは目の前の問題だ。
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