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「僕はどっちでもいいよ。咲ちゃんが好きな方にしなよ」
「うーん、そうだなぁ。じゃぁ、形の似ているストロベリーかな?」
「かたちがにてるとかやめて」
「どっちでもいいって言ったじゃない。女々しいって言われない、そういうの?」
某歌謡曲のポーズを決める咲ちゃん。
文句を言いながらノリノリだ。お客さんがいないからって踊っちゃだめだよ。
そんなお茶目な妹の手から、僕はピンク色の箱をひょいと奪い取る。
それから――シルバーの箔押しになった商品名を見つめて眉をしかめた。
『剛力ストロベリーうすうすMAX0.02』
なんかゴテゴテに要素を足しすぎて頭悪くなったような商品だな。
かろうじて「それ」だとは分かるけれども。
僕が手にしているのは他でもない。
親密なお年頃の男女に必要なアイテム――『コンドーム』だった。
それもちょっとお高め、プレミア感で夜を盛り上げるタイプの。
お目当てのものとはこれのこと。
僕と咲ちゃんは、家の前のコンビニにコンドームを買うために立ち寄っていた。
SEXをするためではない。
「それにほら。丈夫な奴の方が、お兄ちゃんが一人でするとき破れにくいし」
「僕のことはそんなに気にしないでよ」
「気にするよ。サキュバスの義妹のためにシコシコ頑張ってくれるお兄ちゃんを、私はとてもありがたく思っているんだからね」
「咲ちゃん、ここお外だから」
義妹に新鮮な『食事』を提供するためである。
ぼかした用語がなんなのか、追及するような野暮はやめてほしい。
そう。
僕の義妹はこんなですけれど「サキュバス」なんですよ。
「シンデレラ」でも「ヴァンパイア」でも「アニマル」でもなく、ね。
「どうせ出すなら、お兄ちゃんには気持ちよくいっぱい出してほしいの。道具も、場所も、おかずも、いいものを使って欲しいのよ」
「ちゅうもんのおおいさきゅばすだなぁ」
「えへへ! だって『食事』は美味しい方がいいもの!」
残された「チョコレート」フレーバーのコンドームを棚に戻すと、咲ちゃんは僕の手からピンクの箱を取り戻す。扇情的な色をした箱に頬ずりをして、こてりと首を傾げると、彼女は小悪魔っぽい笑顔を僕に向けた。
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