第1話 ハロー、残念なお兄ちゃん

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第1話 ハロー、残念なお兄ちゃん

「あれ? 咲ちゃん?」 「お兄ちゃん! 駅で会うなんて偶然だね! 今帰り?」 「うん。今日はバイトないから――うぷっ!」  自宅最寄りの駅前で学校帰りの義妹とばったり出会った。  そしていきなり抱きつかれた。  黒いショートボブの髪を揺らして笑顔で飛びついてくる美少女。  子犬みたいに僕に甘えてくるのに体つきはちょっと大人びた感じ。170㎝の身長に、すらりと伸びた手足はまるでモデルか俳優さんのよう。  関西の華、宝塚歌劇団の男役のような色気がある。  丁寧にアイロンがけされた黒いセーラー服。上等な生地にお嬢様学校の品格が感じられる。白い襟元のスカーフや、膝まで隠す長めのスカートも一周回ってお洒落だ。  中身も服装も正真正銘の「お嬢様」。  そんな女の子に抱きつかれて、嬉しくない男がいるだろうか。  僕はいないと思う。
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