夏萌片 先輩と冷汁

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帰って台所についたら後は作っていくだけだ。 料理本の手順に従って調理をしつつ、味噌汁の具を切っていく。 (切り身は何度も包丁で叩いて、葱と大場を散らすと) その間になめろうなる料理も作り、余った野菜などは味噌汁の中に入れていく。 最後に味噌で味を調えてそれを冷ませば冷や汁は完成するはずだ。 少し団扇で風を送っていると背後から床の鳴る音が聞こえてきた。 見れば襖の向こうから湯上りの小鳥遊先輩が半分だけ身を乗り出してこちらを見ていた。 「夏萌ちゃん、ご飯できた?」 「もうすぐですよ、待っていてください」 しかしまぁ団扇で風を送るというのも根気のいる作業だ。 せめてこう、もう少し手早くか楽に冷やせるものがあればいいんだけど。 奴から聞いた話ではすでにそういうのが貴族の間でもあるらしいから早く私達にも使えるようになってほしいものだ。 「お待たせ、郷土料理の冷汁と付け合わせのなめろうになります」 盆にのせた料理をそれっぽく恭しく運びながら小鳥遊先輩の待っている居間へと運んでいく。 先輩と言えば見たことのない料理に目を輝かせていた。 「それじゃいただきます」 手を合わせて私もいただくことにする。 冷たい味噌汁なのに暖かいご飯と付け合わせのなめろうのおかげか不思議と不快感はない。 それどころかゆっくりと心が解きほぐされていく感じがする。 美味しい料理とはやっぱりこういうものなんだろう。 (さて、これを食べたら今日は何をしようか) やるべき事はたくさんあるだろうけど、ひとまずは小鳥遊先輩と一緒に目の前の料理を楽しむことにした。
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