夏萌片 先輩と冷汁

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夏萌片 先輩と冷汁

夏、蝉の声が響き渡り青々とした木の葉が彩りを見せる季節。 着物も綿を抜けば涼しく軽い、洋服というのが流行っているみたいだけど私にはやっぱりこれが落ち着く。 さて向かっているのは私の仕事の先輩、小鳥遊さんの屋敷だ。 元は道場だったらしいが門下生も師範もおらず、手放せばいいものをそれを拒んで維持しているらしい。 そうまでしてこだわる理由は今のところ分からないけど、まぁ話したくなったら話してくれるでしょう。 しかしそんな広い屋敷も持て余し気味らしく、私生活に関してはおよそ目も当てられない自堕落っぷりを見せる。 布団は敷きっぱなし、門や玄関には鍵をかけない、本は読みっぱなし。 初めて招かれたときは(先輩の姿か、これが)と目を覆ったほどだ。 以来定期的に訪れてはいくつか料理を作ったり部屋の掃除などをするようにしている。 気のせいかもしれないが、数日放っておいたらいつかふらりと消えてしまいそうだ。 (......なんてね、我ながらきつい冗談だよ) 微かに脳裏をよぎったそれを振り払い、少し足早に屋敷を目指す。 さて、今日はどんな光景が待っているのやら。
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