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世那のトラブル
陽斗と世那が付き合う様になり、仲の良い友人達は喜び、付き合い始めたおかげで陽斗の暴君は治まり、成績も伸び、教師も陽斗の両親も喜んでいた。
世那は世那で両親を納得させるだけの成績を取る為に日夜勉強に励む。
夢だけは譲れないと思っていたのでとにかく必死に勉強していた。
そして、二人が付き合い始めて半年が過ぎ、皆3年生になった。
陽斗はクラス分けで世那、ひかり、伊織、悠人、そして颯人と同じクラスになった。
陽斗はプライベートで所属しているジュニアユースのサッカーチームの試合で国内や海外遠征に行く事が増えて来て、奏多と共に学校を休む日もあった。
世那も陽斗がまさかここまでの実力の持ち主とは知らず驚くと、「お前の為にサッカー選手になるって言っただろ?」と陽斗は必ず言った。
受験も本格化しつつ、陽斗、世那達は最後の中学生活を楽しんで居た。
「世那、あんたどこ受けるの?まぁ、聞くまでも無いけど…」
ひかりは進路希望用紙をペラペラと振りながら溜息を吐く。
「まぁ、国立大の医療関係学部狙いだから…国見ヶ丘か、隣の市の時嶺台だよね。」
世那は問題集を解きながら答える。
「だよねー。一緒のとこは無理だわ。」
「国見ヶ丘の情報科なら入れるんじゃない?」
「やだよ。パソコンなんかやりたくないし。仕方ないから国見の近くの高校にするかぁ…。」
ひかりは高校一覧をペラペラと捲り出した。
「あのさ、やりたい事あるならそこ行きなさいよ。」
世那は咎める。
「あーそうねぇ…伊織は?」
「私?私は本当は世那と一緒のとこ行きたいけど、国見ヶ丘は無理だから家から近い小森高校受けるつもり。結構みんな小森受けるって言ってたよ。近いから。」
伊織もそういいながら塾の課題をやっていた。
「悠人と奏多と世那の旦那は特待で三つ葉学園だし。あ!颯人は?どうするの?」
ひかりは何気なく聞いた。
「あー、俺は世那と同じとこだよ。国見受ける。」
颯人がそう言った途端、陽斗はジロっと颯人を見て、チッと舌打ちをした。
「陽斗…」
世那に咎められ、シュンとするが、目だけは颯人をロックオンしていた。
放課後、夏の大会まであと少しになりどこの運動部もかなり力を入れて練習をしていた。
世那は夏の展覧会に向けて制作をしていると、廊下から自分を呼ぶ声が聞こえ、見るとアミが居た。
「何?」
「ちょっと出られる?」
世那はひよりにアミに呼ばれたから行ってくると言い、あまりにも戻らなければ先生に知らせてと頼み、アミについて行った。
3階の渡りでアミは止まる。
「何?アミ。」
世那は時計を見てどれくらいイチャモンつけられるのか考えているとアミは世那を睨みつけて来た。
「あんた、颯人と同じ高校受けるって、どういうつもりなの?陽斗いるじゃない。あんたも三つ葉行けば?」
アミは言いがかりをつけて来た。世那は(うわー、出たよ…)と思いながら聞いている。
「私が国見ヶ丘受けるのは国公立の医療関係の学部へ行く為。颯人は関係ない。そもそも今日ひかりが聞くまで知らなかったし。あなたにこういう事を言われる筋合いもないわ。」
世那は淡々と話す。
「あんたのそういう所、本当にムカつく!小学校の時、私が陽斗の事好きだったの知ってたくせに陽斗の心も奪って、颯人も結局私と付き合っていてもいつもあんたを気にしてる!キスもしてくれない!全部あんたのせいよ!ほんとに!死ねばいいのに!頭がいいの鼻にかけて、ほんとイヤミな女!」
アミは勉強が出来ないのと人望がないのは己のせいなのに、世那にイチャモンを付けて渡りの柵に世那を押し付ける。
「何するのよ…あんた傷害罪になるの分かってんの?」
世那はこんな時だったがこの子バカだなとアミを見ながら思う。
「ふん。何が傷害罪よ。喧嘩で片づけられるわよ。」
「無理よ。陽斗や皆はわかってるから。」
世那がそう言うとアミは世那の顔を殴る。
「やったわね…じゃあ、遠慮なくお返しよ!!」
世那も負けじとイヤミな笑いをしてアミの顔を思い切り引っ叩いた。
「いった‥‥ほら…あんたの本性出た!!」
アミがそう言った途端、世那はアミを思い切り突き放した。
「せっ!先生!!」
ひよりは3階の渡りに世那とアミが揉み合っているのが見え、職員室へ教師に助けを求めに行った。ひよりの慌て様に教師達はざわつく。
「ひより!どうしたんだよ?!」
悠人が丁度居合わせ聞きに来た。
「あっアミが!世那に!!ひっ!ひさ!陽斗に世那助けてってって!!」
どもるひよりに悠人は只事じゃ無いと感じ取りグランドに走って行った。
「陽斗!!」
陽斗は丁度パス練習中だったが、悠人の異様な雰囲気を読み、直ぐ反応した。
「どうしたんだよ!?」
「せっ、世那が!!アミと3階渡りで揉めてるって、ひよが!」
陽斗は直ぐ走って校舎へ向かい、アミと聞こえ颯人も走って行った。
教師も走っていたが、陽斗と颯人の方が走るのが早く、先に着いた。
二人を見るとお互いに顔を引っ叩き合っていた。
「世那やめろ!!」
「アミも止めろ!!」
陽斗も颯人もそれぞれの彼女を引き離した。
「世那、大丈夫か?あー、引っ掻き傷が…。頬も真っ赤になってるじゃないか!!」
陽斗は珍しく興奮して怒っている世那の呼吸が落ち着く様に背中をさすって抱き締める。
「アミ!何でこんな事するんだよ!!」
颯人は中学でもさすがに謹慎になるぞ!とアミを叱る。
「見ないから…颯人が私をちゃんと見ないから!そりゃそうよね。私と付き合わないと世那がどうなるか知らないわよ!!って言ったら、あなた私と付き合うのオッケーしたんだもん。好きで付き合ったわけじゃ無い、世那を守る為だもんね!!何で陽斗も、颯人も世那がいいのよ!?」
アミは悲痛な声で叫び、颯人を睨んだ。
それを聞いていた世那と陽斗は唖然とする。
『そんな理由…?』
ひよりや悠人、奏多や教師たちも居てアミの言葉をしっかり聞いていた。
教師はアミを立ち上がらせ、颯人と共に指導室へ連れて行き、陽斗は世那を連れて保健室へ向かった。
「ひよ、ごめんね。嫌な所見せちゃって…。」
世那は申し訳ないと謝ったが、ひよりは世那が殺されなくて良かったぁ〜と泣き、世那は「顔の殴り合いで殺されないわよ。」と笑う。そして、陽斗に向き直り、「陽斗も…試合近いし、今日も夕方からまたユースの練習もあるのに…巻き込んでごめんね…。」
「バカか。サッカーより何よりお前の身が危険な時は俺は直ぐ駆けつけるんだよ。覚えとけ!!」
陽斗が世那の頬を冷やしながらそう言うと男の教師達が陽斗を見て感心していた。
「河崎…お前…どこのドラマのセリフだよってくらいカッコイイな…。」
「女が惚れる様なセリフがよくつらつらと出てくるな…普段の勉強の問題もそれくらいで頼むわ。」
「立花…お前相当河崎に愛されてるな…凄いわ。先生びっくりしたよ。」
教師達は陽斗が立派な男になるなぁとわいわいと楽しそうに話していたが、陽斗も世那もだんだん恥ずかしくなり俯いた。
養護教諭が来て世那の頬を見て、世那の親へ連絡し世那は病院へ向かい、陽斗は練習へ戻った。
練習へ戻ると後輩達や悠人、奏多、ひかりがグランドで待っていた。
「陽斗!世那は!?大丈夫!?」
ひかりは少し泣きながら様子を聞いて来て、陽斗が「大丈夫だ。今お母さんと病院へ向かってる。」と言うとほっとしてわんわん泣き出した。
「しかし…颯人がアミと付き合った理由が世那守る為だったって…」
悠人は「ありえん。」と首を振る。
「結果的に颯人は二人共傷つけたんだ。颯人の罪は重いよ。しかも世那…アミと殴り合いって…優等生なのに…進路大丈夫なのかな?」奏多が心配して陽斗に言った。
陽斗は世那の事が心配になりその後の練習に身が入らなかった。
翌日、アミは暫く謹慎になり、その間に心療内科へ通いカウンセリングを受ける事になったと教師は陽斗に教えてくれた。世那はアミと殴り合いをしている時に首を打撲していたらしく、一週間程度安静にする様に言われ休むと連絡があったと教師が気を利かせ世那と仲の良い友人達には説明があった。
颯人は教室で静かにしており、教師から今後アミとの関係をどうするのかしっかり考えろと言われたらしいと奏多が皆に話した。
陽斗は世那と既にメールで(暫くお休みします。お医者さんから安静にして?と言われたの。それと、頬が腫れてるの。相当ひどい殴り合いだったのね私。)とあった。
陽斗は心配でお見舞いに行くと言ったが、世那の父親が過保護で、陽斗が来たら何をしでかすか分からないから、世那自身が元気になってからにしてくれと世那に頼まれたので、ひかり達に頼み、陽斗からのお見舞いもそこに混ぜて持って行ってもらう事にした。
「世那!元気になった?」
数日後、ひかり、伊織、ひより、青葉、みなみが世那の家へ見舞いに来た。
「皆んな、ありがとう。みなみも来てくれたんだ!」
「当たり前じゃない!クラスが端と端状態でなかなか絡む事ないけど、世那が苦しい時は来るよ?」と、みなみは言い世那をハグした。
「世那、陽斗から…はい!花束!あいつほんとキザだよね。朝イチで持って来たのよ。白いバラの花束。」
ひかりは棘が痛いわ!と言いながら世那に渡した。
「本数何本?」伊織は数え出す。
みなみが「24本だねー。」と、言いながらネットで検索すると、「一日中思っています。」だって!と、調べた結果を発表した。
「陽斗は世那さんにゾッコンだよね。幸せダネー、世那さん!」青葉も嬉しそうにバラの花束を見て言った。
「早く、陽斗の顔見たいんだけど、パパが…過保護だから、陽斗が来てくれても大惨事になるから…。」と世那が言うと、全員超過保護な娘大好き世那父を知っているので「あー…」と、言った。
アミの話になり、「何か精神科?通ってるらしいよ?」ひかりは教師から聞いたと話し、みなみは「澪の話しだと、結局家庭環境もあんまり良くなくて鬱憤が溜まっていて、拠り所にしようとした恋愛で先ず陽斗に振られて…颯人には脅して…じゃん?男の子からも人気があって、頭も良くて、友達も多くて…世那が羨ましくて仕方なかったみたいね。全てにおいて逆恨み?」そう聞いたと話す。
「世那、颯人の事どうするの?」
伊織が心配そうに聞く。
「どうもしない。もう颯人は過去の人。私にはちょっと自己中で、強引で、根拠の無い自信家で、でも私には優しくて、誰も居ない美術室でキスして来て…初デートだからって普段スポーツブランドジャージしか着なかったのに、わざわざオシャレな服用意して着てくれて、交際申し込む前にせっかちでお互いの名前と誕生石が入ったペンダントくれて、告白するのに片膝を付いて私の手を取って、周りに人が居るのに公開告白を堂々として、私の為にサッカー選手になるって頑張っている彼氏…河崎陽斗が居るから。私の大切な人は、河崎陽斗です。陽斗以外は興味ありません。」と世那は言い切った。
ひかり達は、『うそーっ!?公開告白?!すげーっ!!カッコ良すぎるだろ?!』と、キャイキャイ騒いで、「明日学校でバラしてやろー!♪」とひかりはウキウキして言った。
翌日…学校…
「陽斗、お前街中の店の中で世那に片膝付いて公開告白したってマジ?!」
奏多が翌朝の部活時に嬉しそうに聞いて来た。
「…誰に聞いたんだよ…。」
陽斗は予想がついていたが念のため聞いた。
周りの後輩達も聞いており、「河崎先輩!世那先輩への愛が凄すぎ!凄いカッコイイです!!」と騒ぎ出す。
陽斗は野球部の方へ走って行き、「悠人ーっ!!」と叫んだが「ひかりが世那がすっげ嬉しそうに言ったのを聞いたって言っていたぞ。」と聞き…嬉しそうに言ってしまった彼女からの垂れ込みじゃ仕方ないと諦めた…。
それから暫く教師や学校中から、「カッコ良すぎる男」と揶揄われた。
『世那、お前がひかりに言ったせいで…学校中から…俺注目されまくって大変なんだけど?』
陽斗はスマホのプランを親に頼み込みかけ放題にしてもらい、世那に毎日電話をしていた。
世那も母親にお願いしてかけ放題にしていたが陽斗が必ず毎日夜9時から30分間と決めて電話していた。世那の勉強の負担にならない様に、世那はサッカーの練習で体が疲れている陽斗の睡眠の妨げにならない様に気をつけていた。
「ごめんなさい…つい…嬉しくて…ひかり達に言っちゃった…。」
『え?達?』
陽斗は固まる。
「あと、伊織、青葉、ひより、みなみが居たよ。」
『そ…そっか…じゃあ仕方ない…あ、首は?良くなった?』
陽斗は心配して聞く。いつも、それが心配で最近パスのミスが多くユースでも叱られていた。
「うん!大丈夫!良くなったし、首も大丈夫よ!私、意外と丈夫みたい!」
世那は医者から言われた事を陽斗に漏れがない様に伝えていた。理由は陽斗が心配症だからだ。
『そっか、いつから学校来られそう?』
「来週から行くね。早く陽斗の顔見たい。実物を。」
『世那、あのさ日曜日ユース休みなんだけど…世那の家…お父さん居る?』
陽斗は世那に確認する。
「うんとね、お父さん…日勤で居ないよ!ママはお休みで居るけど、ママなら大丈夫。むしろ、陽斗に会いたいって言ってるから!日曜日良かったら来て?!」
『うん!行くよ。お昼からだけど、午前中部活だから。弁当持って世那のとこ行くわ。』
世那は爆笑し、「待ってるね。」と答えた。
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