プロローグ

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 大学入試の結果発表の日、百合(ゆり)信吾(しんご)は、信吾の部屋のミニテーブルの前に座り、合否結果の入った封筒を持っていた。カッターを順番に使いながらサクサクと封を切る。  互いが切り終わったのを確認すると、二人は声を合わせた。 「「せーの」」  「の」に合わせて、二人は同時に中身を取り出し、三つ折りの紙を開いて、テーブルの上に広げた。そして、恐る恐る互いは互いの紙を見る。 「……二人とも、合格よ!」  百合は明るい声でそう叫び、信吾と顔を見合わせた。信吾の方も、頬を綻ばせ、歓喜の表情である。 「おめでとう、百合! 毎日予備校行って、頑張ったもんな!」 「信吾こそ! 寝る間も惜しんで机に向かっていたじゃない! 報われたわね!」  その瞬間、百合と信吾は合格通知書をひらりと投げ出し、服がしわくちゃになるほどきつく抱き合った。ポンポンと互いの背中を叩き合う。 そして、二人はゆっくりと床に倒れこんだ。そのときの二人には未来に不安なんて言葉はなかった。大きめの窓から日の光が斜めに入り、ちょうど二人の顔を照らしていた。未来は希望に満ちている。まだ若い二人はそんな風に本気で思っていた。
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