3人が本棚に入れています
本棚に追加
真木が振り返って、足を止めたままの僕に首を傾げた。何でもないと首を振って追いついて、二人で東門をくぐる。
「危険を知らせるために使うのが正しいんだっけ」
「そうそう」
真木は頷いた。
立派な柱も柵もない、車止めのポールが一本生えただけの入り口。大学なんて全員が顔見知りでもなく、部外者だって簡単に入れる。
駐輪場を過ぎて、腰ほどの高さの生垣に囲まれた小道へ真木が進む。二人並ぶと肩がぶつかってしまう幅しかないこの道は、風情を重視したのか設計を間違えたのか、今となっては誰も知らないのだろう。
「本当はあっちが避けないといけないよ」
「狭い道だと難しいけど」
サークル棟が見えてくる。こんな風に狭い道だと避けられないから。そう、スピードを落とすとか待つとか、そうしないと――
小道の最後で生垣が途切れて、土の地面は半円に広がる。真木が大きく一歩、アスファルトとの境界線をまたいで、大きな常緑樹の影に入った。
「ねえ」
真木が片足を軸に回るようにして振り返った。僕は土の上に取り残される。
「誰をごみにしたいの?」
「――え」
目がすうっと細められる。口元がわずかに持ち上がる。
「誰を捨てて燃やしたいの? 誰のお葬式をしたくないの?」
「え? や、誰とかじゃ」
流れるように真木は喋る。周囲の音は消えていた。
「何で死んじゃった生き物に、おめでとうって言うようになったの?」
最初のコメントを投稿しよう!