未来を思い出して

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(あらかじ)め祝うこと」  真木の背丈は同じくらいで、僕より高い印象を抱いていたので少し意外だった。 「未来を祝うことで、その未来を引き寄せて現実にすることができる――と信じる考え方」 「前祝いみたいな」 「そうそう。前祝いって言うと、確実な未来のイメージが強いかもしれないけど」  何だか宗教チック。言葉の響きだろうか。僕の偏見かもしれないけど。そういえば宗教勧誘には気をつけなさいと、オリエンテーションの時に教授が喋っていた。 「それで、何でおめでとう?」  うかがう僕の視線にも動じず、真木はリュックを背負い直した。 「人生が終わったから」 「悼むんじゃなくて?」 「だって死んで嫌だったかどうか分からないでしょ、もう十分生きたかもしれない。そうじゃなくてもそこまで生きたのに、可哀想とか悲しいとかばっかり言われても嫌だから」  真木は少し顔をしかめた。つま先に視線を落として拗ねているようにも見えた。  命が終わっても、真木はいいと思ってる? それとも悲しみたくない? 誰かを思っているのか真木の話か、可能性の一般論かは分からなかった。 「まあ、それは置いといてさ」  真木は僕を見た。 「死んで全部終わりにしても、死後の世界があるにしても、次の人生があるにしても。悪いよりいい方がいいでしょ? だからそのお祝い。予祝だよ」 「……なるほど」
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