私の恋はアオハルならぬアカハル

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カッターを手首に当てる。 ツウッと流れた血の赤さが、今の私には心地良かった。 「……何してるの」 静かな声に振り向くと、部長がいた。 「見て分かりません?切っただけですよ」 答えると、溜息をつ吐かれた。 「腕を出しなさい」 反論する暇もなく、彼女はポケットからハンカチを取り出して私の腕を抑えた。 「傷だらけじゃない…」 再び息を吐いた彼女は無常にも私からカッターを取り上げた。 「あの……」 「なに?」 「先輩、なんで、こんな事したか聞かないんですか?」 そう言うと彼女は冷ややかな口調で答えた。 「聞きたいと思ってないわ、そんなこと」 言われた言葉は私にとって予想外で、思わず彼女の顔を見つめてしまう。 「なによ?」 不機嫌そうな顔に慌てて視線を外すが、どうしても気になってまた見てしまった。 「別に聞いてほしいなら聞くわよ?でも話したところで解決はしないじゃない。どうせ話すなら私なんかより専門家でも頼ればいいのよ」 投げやりな態度だが、言っていることは的確だった。 私は確かに、自分の中のドロリとした黒い感情を持て余している。 誰かに打ち明けたところでどうにかなるわけでもないのだ。 一人で消化できないからこそ、こうして自分を傷つけているわけだし……。 「まさか、昼休みに他の人がここにいるなんて驚いたわよ」 その言葉でハッとする。 時計を見ると既に授業開始まで10分もなかった。 「あ、えっと……とりあえずカッター、返してください」 そう言って手を差し出すと彼女は呆れたように言った。 「保健室で手当てしてもらうわよ、それぐらいの時間はあるからついてきなさい」 そして有無を言わさず、私の右手を掴んで歩き出した。……意外にも力が強いことにドキッとして少し体温が上がった気がした。
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