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ウニクロに限らず他の店舗でも似たようなやり取りが繰り返されたため、オレは完全に「若い娘を連れた変態親父」のレッテルを張られたような気分になった。
お昼近くになり、オレ達は専門店街から逃げるようにフードコートに移動した。
平凛に何が食べたいかを尋ねたら、
「ダンナ様と同じ物を」
としか答えなかったので、仕方なく比較的何でも揃っていそうなレストランに入ることにした。
メニューを見せても、やはり「同じ物を」ということだったので、オレは栄養バランスの取れているA定食に決めた。
食事が来ると、やはりというか、予想した通り、
「ダンナ様、ア~ン」
が待っていたが、オレはそんなに悪い気はせずいただき、オレも平凛に、
「平凛、ア~ン」
とお返ししてやった。
平凛は、満面に笑みを浮かべてニコニコして食べていた。平凛が笑っているとオレも嬉しいし、幸せな気分になれる。こんなひと時の幸せを、オレは大切にしたいと思った。
しかしながら、当たり前のようにオレ達の周りには誰も寄り付かなかった…。
食事を終え平凛に、
「この後はどうすんだ?」
と聞いてみたら、
「あとは文房具に、それと…」
「ン?それと何だ?」
「ダ…ダンナ様の…下着をムニャムニャ…」
「え?悪い…聞こえなかった。もう一回いいか?」
「ダンナ様の…下着を、か…買いたいです!」
いきなり大声になったので、今度は店中の人が振り返った…。
文房具を後回しにし、オレ達はオレの下着を売っているコーナーに行くと、そこには主婦の人だろうか、2~3名の女性がいたが、違和感はない。
オレが女性下着売り場にいるとあんなに目立つのに、不公平じゃないのか?と少し思った。
オレはそこでもできるだけ長居はしたくなかったので、好きな色と柄のトランクスを適当に2~3枚取って、すぐにレジに向かおうとしたら、平凛が、
「ダンナ様、お待ちくださいませ」
と言いながら、平凛は自分の顔の高さにトランクスを広げて一枚ずつマジマジと見だした。
「この穴は何でございますか?これは不良品ではありませんか?」
という。オレは、
「そ…それでいいんだよ」
と言って平凛から商品を取り上げてレジに向かった。
そこでも、
「あの…それは不良品でございます。穴が開いているのでございます…交換をして下さい…」
と平凛はレジの店員に訴えたが、店員はうつむくだけで何も言えなかった…。
「平凛…そのことは後で教えるから…」
オレはそう言ってから、早々にレジで精算し、文具店に向かった…。
買い物を済ませた後、メインモール広場に立ち寄ったところ、バレンタインの豪華な飾り付けがされていて、通りかかる人達が足を止めて見とれていた。
平凛もその前でしばらく足を止めて見つめていたが、
「よし!」
と言ったあと再び歩き出した。
オレは、
「どうした?何かあったのか?」
と聞いても、
「何でもございません…」
と言うばかりだった…。
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