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「さてと、私も馳走になろうかな。武蔵野や、そちらの麗しき姫様に、同席のお伺いをたてておくれよ」
守近の飄々とした、それでいて、手慣れた人扱いぶりに、なんと粋な貴公子様でしょうと、女房達は、さんざめく。
「ご自分でなされませ!」
武蔵野は、からかわれたと、仏頂面を崩さない。
「だそうです。徳子姫?」
言って、守近は、徳子の側に腰を下ろした。
「あら、守近様も、武蔵野も、仲が、およろしいこと」
「あれ、徳子姫。仲が良いのは、私達ではありませんか?今まで、仲違いのひとつもしたことがありませんよ?」
お約束のごとき守近の甘い言葉に、きゃぁと、沙奈が、小さく声をあげ、女房達は、赤らんだ頬を隠すよう袖を顔にあてて、遠い目をする。
このように、屋敷の者は、常に、二人の仲に惑わされていた。
そんな周りの様子などお構いなしで、守近は、目についた菓子を口へ放り込んだ。
「おや、これは、旨い。うん、程よい甘さがたまらない」
よほど気に入ったのか、守近は、再び手を伸ばす。
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