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「うー、ちょっと寒いな。
っていうか、ネコのエサってコンビニに売ってたっけ?」
秋口といえども日が沈んだ後はそれなりに冷える。
ヤスオが両手をポケットに突っ込み、肩をすくめて歩いていると、コンビニの看板の端っこが見えたあたりでスマホに着信があった。
「ちっ、こんなときに仕事か?」
ヤスオが副業として登録している会社からの電話であった。
「やあ、ペトくん、元気かい?
近くにゲストが見えているようだ。ちょっと接客を頼まれてくれないか?」
「はあ、近くですか」
「セブンマートの前の通りを東に20メートル。コインパーキングがある」
ゲストというのは、一般には「悪魔」と呼ばれるような異形の存在のことである。
フリーのエクソシスト(悪魔祓い師)であるヤスオの仕事上の名前が「ペト」だ。
電話一本で仕事を請け負ったエクソシストはロクに情報を与えられないまま現場に直行する。
料理を運ぶあの仕事と似たようなものだ。
「ゲストのデータは何かありますか?」
「反応はトールのマキアート。いつものことだが詳細は不明だ」
「トール」はゲストのだいたいの大きさ、
そして「マキアート」というのはコーヒーの種類だが、ここでは悪魔の ヤバさ の度合いを表す。苦いコーヒーほど厄介な相手というわけだ。
「マ、マジすか。
マキアートだと、ちょっと今ろくな武器持ってないんで・・」
「既に応援は要請済だ。
パウくんが間もなくそちらに合流するだろう」
「了解。
じゃ、到着を待って接客します」
あのネコには悪いが、チュールなんとかはもうちょっと待ってもらうことになりそうだ。
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