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21 完治
「完治じゃな。ヒヒヒ。無茶するんじゃないぞ坊主。まぁまた来たらわしが儲かるだけじゃな」
「口の減らないじじぃだな!ありがとな」
じじぃとおっさん、二人してグルになりやがって、俺の完治を遅らせやがった。ちっぽけな傷の跡を見つけては、まだ傷が残ってる、復帰したらこれが開くかもしれない、まだ傷痕が…って、最終的に虫メガネを出してくる始末。過保護か!なんなんだ。
「少しの傷くらい男の勲章ってもんじゃないか」
あまりに煩くてしつこいので、病院で喚いてやったら
「悠生。知らないんですか?腕のいい殺し屋は傷跡一つない綺麗な体をしているんですよ?」
さも当然みたいに言いやがった。
あんたはその一流の殺し屋の体を見るなんていう状況になった事があんのかよ!全身か!全身真っ裸で一対一でなんて、エッチな事しか起こらねーじゃねーか!おっさんは大人だから前の恋人だの、恋人じゃなくてもそういう事はあったのかもしれないけれど。ほら、若い頃無茶した人だってじじぃも言ってたし、そっち関係もあちこち手出してんのかもしんないけど!
俺はおっさんが初めての相手で、今んとこおっさんしか考えられないんだから。面白くない。子供ですねって笑われるかもしれないから言えない言わないけど、クソ面白くない。ガキなのは自分で分かってるから、このくらいの事で拗ねたっていいんだ。ケッ。グレてやる。
一先ず治った連絡をボスにしなきゃならない。おっさんもボスの所に一足先に向かって、着いたら話すだろうけど、一応自分で連絡をとるのは育ててもらった恩もあるんだから当然だ。
以前は一番連絡をとってた相手。今では発信履歴の下の方にスクロールしなければ出てこない連絡先。あった。一呼吸おいてから画面を押すと、ボスはすぐに出た。
「悠生。休暇はゆっくりできたか」
「はい。すっかり治りましたので連絡を」
「いい心がけだな。そろそろ治るだろうと数日待ってたんだ。お前にいい話がある」
ボスからの命令は絶対。不満があったって断らない。断る理由もなかった。でも今は…
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