6 再会は誘惑

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6 再会は誘惑

 新たな指令が出て、ターゲットを観察する日々が続いた。このターゲットには決まった情婦がいて、密会はいつも同じホテルの同じ部屋だった。そうなりゃ盗聴噐を仕掛けるのは女の方。『I』にやらせる。あいつは小回りもきくし、手先も器用だ。  俺はいつも通り隣の部屋を取って、ターゲットの行動パターンを読み取るのみ。ふと、そこにこないだのおっさんを呼んだらどうなるんだろうっていう遊び心が出てきてしまった。この先も交わる事がないだろう、おっさんと俺の組織内での立ち位置。興味を持ったなら何かアクションを起こさなくてはならない。ボスは俺に甘いからな。  今まで失敗なしだからあまり前だろ。それを使わせてもらうことにした。コール三回でボスは出た。 「あぁ。Uか。順調か?…そうか。あぁ、あぁ、分かった、行かせる」  電話をしていたボスがこちらを向く。Uというコードネームが出てきたから、あの少年と話していたようですね。私とは接点がない、あの少年。 「市井、Uが今回のホテルでの盗聴手伝ってほしいそうだ。今日夜○△ホテル。行けるな?」 「はい、行けますよ」 「いつも手伝いが必要な時は同世代の奴を呼ぶUがお前を指名とはな。分かってるな、U は組織に取って大事な人材だ。あいつが失敗なしなのも、こんな風に慎重で入念な下準備を怠らないからなんだ。壊すなよ?」 「それは、今回の任務ではなくUを壊すなって意味ですよね。分かってますよ、私はそこまで鬼畜じゃありませんよ。仕事の手伝いで呼ばれたんだから、期待はしませんよ」 「分かってるならいいんだが、お前の性癖は知ってるから念のためだよ」 「忠告ありがとうございますボス。早速寄る所もあるんで、もう行ってきますね」  Uからの指名。どういうことなんでしょうね。気に入られるような事をした覚えはありませんが。何にせよ心躍りますね。まだ何にも染まってないあの少年。壊してはダメだから程々に、可愛がってあげたいですね。 分かってますよ、仕事です。しかし私も男ですからあわよくばという気持ちをもつのは仕方がないでしょう。  一応、ローションとゴムはエチケットとして持っていきますかね。  夜。指定されたホテルの部屋に行くと、Uはヘッドフォンをつけてベッドに転がっていた。盗聴中なんでしょう。 「あぁ、おっさん。ほんとに来たんだ」 片側だけ耳から外してこちらを見る。あなたが指名してきたのでは? 「それで聴いてるんですよね?」 「あぁ、そう」 「なら、私いらないのでは?」 「あっ?いっつも眠くなった時の交代要員とか、帰りの女から盗聴噐抜く為に誰かしらいるんだよ」 「それはあなたが使ってる同年代の子供ですよね?私は?」 「それは……」 「あなたから見たらおっさんのようですけど興味ありますか?」 「おっさん…そっち系の人だよな?こないだ俺の事そういう目で見てた。もし俺が殺し出来なくなっても、俺の事必要って思ってくれないかな…なんて…考えて……。もういい!帰っていいよ!」  そうでしたか。あなたは、愛情が欲しいんですね。施設出身というのは聞きました。誰かから、特定の人物からの愛情を向けられた事がないのでしょうか。こんなに、そそられる顔と身体をしているのに。同年代の子供じゃ手が出せない相手ですからね。欲しがってくれるならあげますよ。あなたが殺しなんて出来なくなろうが私には関係ないですから。 愛した人が殺し屋じゃなくなるならそれは本望です。望む以上の愛を与えてあげますよ。 「帰れって……」 「U。下の名前だけでも教えてくれませんか?」 「??」 「恋人候補の名前も知らないなんてね。無粋だと思いませんか」 「恋、人?……悠生。悠然の悠って漢字に生きるで悠生(ゆう)」 「あぁ、Uって名前そのままだったんですか。案外ボスもそういった所ありますからね、悠生。」  近づいて悠生の隣に腰をおろす。帰れとは言っていたものの帰られたらどうしようと不安が見え隠れしていた目。 「始めましょうか。恋人になる為の事」  
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