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「円谷……ほら、ちゃんと俺を見て」  頬に触れる、香椎くんの手。僕が顔を背けないよう包み込むその温もりに、胸が破裂してしまいそう。緊張に喉が渇く。目なんて、とてもじゃないけど合わせられない。 「や、やっぱり無理だよ、香椎くん……」  睫毛を伏せて、僕は彼の視線から逃れようとする。放課後の特訓が始まってから、もうずっとこの調子だ。香椎くんが思案げに唸った。 「それなら、円谷。いきなり目を見なくてもいいから、まずは唇の辺りを目標にしてみろよ」 「く、唇……」  言われた通り、視線をゆっくりと彼の口元の辺りまで引き上げてみる。形の良い香椎くんの唇。これはこれでドキドキしてしまって、難易度が高い。 「そう、その調子。そのまま、何か話してみろよ」 「な、何かって、何を」 「そうだな……趣味でも何でもいいから、円谷のこと、教えてよ」 「え? で、でも、そんなの、面白くないと思うけど……」 「そんなことない。俺は聞きたいよ。円谷の話」  まただ。キュッと、胸が締め付けられる。そんな風に言ってくれるのは、香椎くんだけだ。 「どうして、香椎くんは……」 「うん?」
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