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起
広がる青空。太陽は高く、遠く。手を伸ばしても届かない光を、僕は今日も焦がれて見上げるだけ。
「危ない!」
突如、横合いから掛けられた声。振り向いた直後、目の前に星が散った。
「やっべ!」
「悪ぃ! 円谷!」
痛った……。
校庭でボール遊びをしていた同級生達の大暴投を脳天に食らったのだということは、数瞬後に気付いた。実はこれが初めてじゃない。
「また円谷? こないだも当たってなかった?」
「的がでかいからな。にしても、どんくさ」
周囲からそんな声が飛び交う。そう、僕は鈍臭い。
円谷 真澄、高校二年生。身長百八十五センチ。背は高いのに、気は小さくて臆病。この無駄に人目を引く長身がコンプレックス。
運動神経皆無なのに、上背だけでスポーツが出来ると勘違いされることが多かった。去年の球技大会ではバスケのメンバーに選出されてしまい、大いにへっぽこっぷりを露呈して皆に迷惑を掛けてしまった。
周囲の期待の目が徐々に曇っていくのを見るのが辛くて、人と目を合わせられなくなった。今では、前髪を長く伸ばして、防護幕を張っている。
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