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ハッピーエンド
ゲストたちは、ささやきながら立ちつくしている。
彼らは、このパーティーのそもそもの目的を知っていたかもしれない。だけど、たったいま起こった衝撃的な事件で、それは払拭されてしまったにちがいない。
お父様の名誉は守られた。
トマス様に感謝してもしきれない。
「紳士淑女諸君、茶番はこれでおしまいだ。今夜諸君に集まってもらったのは、わたしとユイの婚約、および結婚を発表したいからである。マルグリット将軍の喪が明けたばかりだが、将軍も愛娘が一日でもはやくしあわせになれるのであれば許してくれるだろう。諸君も、どうか彼女のしあわせを祝福してほしい」
トマス様が宣言し終えたと同時に、大広間内だけでなく廊下に溢れている人々からも歓声があがった。
幾つもの祝福の声が、屋敷を包む。
「殿下、まずは殿下がユイ様に祝福を」
親衛隊の隊長が、にこにこしながらささやいてきた。
「わかっている」
トマス様は、その隊長の肩を軽く小突いてからわたしに向き直った。
「ユイ、あらためてきみに婚約を申し込みたい。生涯、わたしと共にあゆんでくれるかい?」
「はい」
彼と視線を合わせたまま、大きくうなずいて了承した。
「ユイ、とても美しいよ。あのとききみに出会い、平手打ちを食らったことを神に感謝するよ」
彼は、唇をさっと重ねてきた。
わたしの肩を握る彼の手は、緊張で震えているけどとってもあたたかい。
「愛しているよ」
いったん唇が離れ、そうささやかれた。
「わたしも愛しています」
そして、また唇が重なった。
周囲の屋敷から苦情がくるのではないかと冷や冷やするほど、屋敷はいつまでも歓声に包まれた。
(了)
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