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この子と同級生になるはずだった私の娘が笑ってくれている、そして、死んだ妻も私の人助けを褒めてくれているだろう。
「自殺志願者が、自殺の名所で同じ自殺志願者を思いとどまらせる、なんて話を聞いたことあるけど、それと同じだね」
「わしは帰るぞ」
何か生きるテーマなり、主題というものを見つけなくては。億劫ながら、そう思おうとする気持ちがわずかに現れた。老い先短い人生、どう花火を打ち上げようか。
「あとね、」
彼女が少し恥ずかしそうに言った。
「覚えてなさそうだけど、実は私たち、体を重ねてもいるの」
(なんと)
この瞬間、おそらく娘や妻が私の頭をスリッパで思いっきり引っぱたいているだろう。笑いがこみ上げてくる。
「それはまた…」
最高級の食材で丁寧に作った甘いスイーツの完成間近、豪快にソースをぶちまけるかのように、この物語は終わりを告げる。
事実は小説よりもなんとやら。生きてこそである。そう、人生は完成しない料理を作り続けていくことなのかもしれない。
終わり
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