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「わたし」
私はぼんやりと部屋を見渡した。
背の低い木造の天井からぶら下がる昔ながらの電灯。そこから垂れ下がるひもが、隙間風に流され、かすかに揺れている。
漆喰の壁には鉛筆で何やら落書きがされていて、角部屋であることを示すように半分は窓枠、もう半分は襖で仕切られていた。
足元に目をやると、日に焼けた畳が少々ささくれ立っている。
小さな3段のタンスは古びた木製。もっと古びた年季入りの勉強机とパイプ椅子。
懐かしいという感情が、知らずと込みあがった。
どうやらここは17歳まで住んでいた実家の、しかも幼少時代の私の部屋だ。
そう実感した。
少しばかりテンションがあがり、キョロキョロとあたりを見回していると、部屋の隅に三角座りをしている子どもがいた。
まるで座敷童のように見えるが、あれは私じゃないだろうか。
服にも髪型にも見覚えはないが、雰囲気がそうだと伝えている。
真相を確かめるべく、私はそっとその子どもに近づいた。
子どもはヒックヒックと喉を鳴らし、そのたびに肩をピクンピクンと上げ下げしている。
大声で泣いたあとは、落ち着くまで膝の間に顔をうずめやり過ごす。
私にもこれと同じような記憶がある。
「どうした? またお姉ちゃんにいじめられたか?」
思わず私は子どもに声をかけた。
子どもは小さくうなづいて「お姉ちゃん、だいきらい」と言った。
そう、私も幼いころは、酷く姉にいじめられていた。
だから今、目の前で泣いている子どもの気持ちは、十分すぎるくらい理解できた。
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