「わたし」

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子どもは全く理解不能の様子で「わたしって名前なの?」と言い、そうしてゴロンと横になってすぐにスゥスゥと寝息を立てた。 泣き疲れたのだろうか? まあ、子どもだもんな。 私は子どもの髪をそっと撫でた。 髪も服同様、カチカチのベタベタだ。 それでも、私は髪を撫でてやった。 私は知っていたからだ。 この子どものミカタは、私しかいないことを。 「ねえねえ」 目を覚ました子どもが私に呼びかけたような気がして、私は「なんだ?」と返した。 「死んじゃおうかな」 子どもはおもむろに体を起こすと、また三角座りをして壁に寄り掛かった。 頬には赤く畳のあとがついている。 少し痛々しく感じて、私はその頬に手を伸ばすが子どもには伝わらないらしい。 なんの反応も示さなかった。 「死ぬ?」 訊き返すと「だって」と唇を尖らす。 「お姉ちゃんが死ね死ね言うから」 「死ねって言われたら死ぬのか?」 子どもの単純さはある意味危険だよな、と思う。 子供にとっての「死ぬこと」のハードルの低さは、無知から来るものなのか。それとも生への執着が芽生える前なのか。 子どもの頃の自分を鑑みても、死ぬことに関してどこか投げやりな気持ちがあったような気がする。 そう、この子どものように。
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