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ゆきだるま。
これは、私が小学生の時にあったぞっとする話。
プライバシーの問題もあるので正確な地名は伏せるが、私が子供の頃住んでいたその場所は“一年に一度くらい、どっさり雪が降る”ようなところだった。本格的に雪が降る地方ほどではなく、かといって雪なんて滅多に見ないというほど暖かいというわけでもない。まあ、なんとなーくそれで察してくれれば嬉しい。
大人にとっては雪なんて迷惑なだけだろうが、私達子供にとってはそうではなかった。毎年十二月から一月にかけては、雪がたくさん降る日を心から待ちわびたものである。何故なら当時の私達には、近所に住んでいる友人同士でちょっとした暗黙の了解があったからだ。
「よっしゃー!雪雪雪雪!今年は早く降った!」
クリスマスを間近に控えたその日、私は窓の外を見て拳を突き上げていた。なんとも空気を読んでくれる天気である。というのも、今日は金曜日。明日は学校が休みであり、好きなだけ外遊びができると知っているからだ。
「可純ちゃんほんと、雪が好きよねー」
そんな私を見つつ、呆れたように笑う母。
「寒いし、電車動かなくなるかもしれないし、道は凍るし雪かきしなくちゃいけないし、ほんと大変じゃない?」
「大変じゃないもん、雪かきも私好きだから!」
「ほんと元気ですこと。誰に似たんだか」
いや、それは十中八九アナタにですが、とは心の中だけで。今でこそ落ち着いているものの、昔のお母さんはかなりのお転婆だったと聞いている。具体的には、男の子にまじって木登りや鬼ごっこをしまくり、ガキ大将をボコボコにして泣かせて先生にこっぴどく叱られた――などなど数々の武勇伝を持っているほどには。
ついでに、中学生の頃はプチ不良してたことも知っている。自分の男勝りで喧嘩っ早い性格は、確実に母の遺伝だろう。
――まー、おかげで体育の授業で苦労してないからいいけどさー。
女の子にしては体が大きくて力持ち、ついでにかけっこでもクラスで一二を争う早さ。確実に母の血によるものだろう。間違っても、作家で超インドア派な父の血ではない。
「明日の朝にはやんでるよね?やんでるよね?ね?」
私のテンションは上がりっぱなしである。
「明日になったらいつもの公園に集合だー!お母さんも来る?」
「寒いからパスー。終わるまでお家でぬくぬくしてるわ」
「つれないなー。運動不足で太っても知らないぞ」
「余計なお世話よ!」
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