再生

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「死人の魂は天に帰る。白装束の使いが天からやって来るのだ。……古今東西、そのことに違いはない。ワシは国中を回ってそれを知った。……傀儡子の元に来るのは百太夫よ。偽りではないぞ」 「熊蔵さまは物知りですねぇ」 「知っただけでは足らんのだ」 「はい。信じます」 「いや、実践するのだ。……何事も実践しなければ意味がない」  熊蔵の身体は更に傾き、雉女の膝を枕にして横たわった。 「熊蔵さま。天に昇る実践など、必要ありませんよ」 「スマン……。雉女は弁才天。既に実践しておったな。……ワシの負けだ」 「そんなことはありません。私は好き勝手に生きているだけですから」 「いやいや……」  熊蔵の声が止み、スースーという静かな寝息に変わった。赤子のような寝顔をしている。 「寝たようだね。膝から下ろすといい」  梅香に促されたが、雉女はそうできなかった。動かしたら、熊蔵の魂が身体から転がり落ちそうな気がしたのだ。彼の肩を撫でながら、伊之介や太郎たちが奏でている太鼓や笛の音に耳を傾け、うとうとと時を過ごした。
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