12.マイの探偵ごっこ

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12.マイの探偵ごっこ

「全く……。美鈴のおかげで探偵ごっこやらされてるわよ」 「マイ、ごめん」私は親友に手を合わせた。「だってこんなコト頼めるのマイしかいないんだもん」    そう。大学で仲良くしているマイとナツミのうちどちらが相談役としてより信頼できるかと言われれば圧倒的にマイだ。彼女はおっとりしていて、何も考えていないように見えるが、実は知識と経験の宝庫なのだ。木ノ下くんとのこともマイに相談することが多くなった。根が優しいから、解決困難な状況でも少なくとも考えるふりはしてくれる。そっと寄り添ってくれるから、心がほんわかと温かい。  ナツミに相談を持ち掛けようものなら、余計にストレスを受ける。「思ってることをズバッと言ってやればいいじゃん」とか「ストレス一人で抱えてないで、カラオケ行こう、カラオケ!」とか、意志と行動力での解決を推奨してくる。それができないから悩んでいるというのに。  私はテーブルにグラスを置き冷蔵庫から出してきた麦茶を注いでやる。勉強机に向いていた扇風機を彼女に向けてやる。 「まあ、幼稚園からこの財団でお世話になってるからさあ、アタシ自身も、お母さんも財団のことについてはちょっと知ってるよ」  彼女に相談を持ち掛けたのは、小中高大とエスカレーター式に進学してきた彼女の情報力を当てにしたからだ。彼女のお母さんの情報収集力をも合わせたら、財団の理事長の娘であるという山崎先生の奥さんのことについて、有力な情報を得られるのではないかと踏んだのだった。 「お亡くなりになったというのは、本当らしいよ」 「はあ……、やっぱりそうなんだ……」  私は身を乗り出す。 「去年の春だって」 「で、死因は……」 「表向きは事故死ということだったんだけど、どうやら自殺らしいって」 「じ、自殺⁉」 「うん。オカン情報だから、けっこう当てにできるよ」
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