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シャワーを使わせてもらった。用意してもらった浴衣を着て奥様の寝室に入った。奥様と色違いの浴衣だ。ベッドの縁に縫いぐるみのようにちょこんと座っている奥様はいつものようにかわいかった。彼女は私の目を覗き込むようにして囁いた。
「私の身体が動くうちに、スズちゃんと一つになりたいの」
奥様はまた「一つになりたい」と言ったのだった。それはわたしとの身体の関係が含まれていることは確かなのだが、明らかにそれ以上のことを指していた。それが何なのか、今一つ輪郭がつかめなくてじれったい。
「一つになりたい」──男にそう言われれば、性器と性器を合わせるセックスのことになるのだろう。女性である奥様と同じく女性である私が一つになるというのはどういうことなのだろう。
「あなたの身体と私の身体が完全に同化することなの」
私の表情から心を読み取ったらしい奥様が続ける。
「私はじきに身体が動かなくなるわ。だから自由自在に動かせる肉体が欲しい。先生にしてあげたいことがたくさんあるから。私の心があなたの身体に入れば、あなたの身体を自由に使うことができる。私の身体が少しでも動くうちに、あなたの肉体に私の心を宿らせたいのよ。願いは必ず現実化する。──そう信じているの。先生は私の夫。とても愛してる。スズちゃんも先生が好き。大人の男性へのただの憧れだなんて言ってたけど、私が見る限りあなた、もっと激しい深い情念を抱いているわ。──それが見える。それも現実になる。スズちゃんの先生に対する思いは、必ず報いられるわ」
願いは現実化する。──奥様の言うとおりだと思う。私の膣には先生の指が差し込まれている。それは先生に挿入してもらいたいという、深くて激しい欲望が描いた妄想だ。その妄想であるはずのものが、私の意思とは関係なくごそごそと蠢くのだ。妄想の域を脱しそれは現実になりつつある。妄想は現実化する。願いは必ずかなう。少なくともこのお屋敷の人々と関係を持っている限り。
「先生はあなたのものになるのよ。私と一つになれさえすればね。それはあなたが望むことでもあるでしょ? さあ、私の心を受け入れて! 私の思いのままに反応して!」
視界にぱっと大輪の花が開いた。「ぱーん」と、夜空に花火の弾ける音さえ聞こえた。そう、願いが叶う。妄想は現実となる。先生が私のものになる!
花火の轟音とともに奥様に対する疑念もパーンと吹き飛んだ。
手が伸びてきて私の浴衣を開く。奥様の目の奥に欲望が灯っている。
私も奥様の浴衣を剥ぐ。プレゼントのリボンと包装紙をほどくように、前身頃を少しずつまくっていく。奥様と私の利益は完全なる一致を見ている。すでにこの時点で私は奥様と一つになっていたのではないだろうか。
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