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浴室でクモの糸を垂らしていたあの敏感な性器は、今はもうないのだ。病は恐ろしいほどの速度で奥様の若さ蝕んでゆく。あんなに濡れていた肥沃の大地が今はもう泉が枯れ、かさかさに乾燥した荒地となっている。なんてむごい現実。
「あなたの濡れたおまんこを頂戴」
奥様は「おまんこ」と言った。「アソコ」でも「性器」でも「陰唇」でもなく「おまんこ」と。
「おまんこ」──そう呼ばれることにより、それは医学や解剖学の研究対象の領域から逃走する。女の欲望の噴出口。男の欲望が執拗に向かう目的地。聞くだけで男も女も濡れてしまう魔法の言葉。
私も言葉の呪術にかけられてしまったのだろうか。生まれて初めての大胆な行動に出た。
体の不自由な奥様を仰向けに寝かせ、私は逆向けに跨る。奥様が私の「おまんこ」を至近距離で見られるように、そして思う存分指でいたずらできるように、望むのなら舌を這わせられるように、奥様の顔に近づけたのだった。
奥様の鼻息で、陰毛がそよぐ。
「よく見えるわ」
「こんなことするの初めてです。ほんとはすごく恥ずかしいです。でも、奥様がお望みになるのなら……はあああっ!」
強い快感が稲妻のように総身を走り抜けた。四つん這いの背骨が弓なりに反り返った。子宮と腹筋がプルプル震えた。反射的に腰を引こうとしたが、奥様にしっかり抱えられている。いったい何が起きたのだろうか。開いた股間を覗き込もうとしたとき、再度強い刺激が身体を駆け抜ける。
「ひゃああああっ!」
甲高い声が寝室に反響した。先生にも絶対聞こえている。恥ずかしい。しかし今は羞恥心などものともしない天国級の快感が私を支配している。先生に聞こえてもいい。この快感だけは手放したくないから。
ぬめっとした生暖かいものが私の秘密の花びらを這いまわっている。奥様が私の花びらを割って舌を突っ込んできたのだった。
「ふふふ……。スズちゃんの赤ちゃん、ぴょっこりと出てきてるわよ」
奥様はそう言って、キュウッと赤ちゃんを吸い出した。
「んぁああああ……」
見えているものも、聞こえているものも、身体の中にあったものも、考えていたことも、すべてが木っ端微塵に飛び散った。
「ああっ、奥様……、何これ、何なの、これ!」
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