14.先生の告白

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 実はそのころから、妹の存在が気になってしょうがなかったんです。高校生の瑞貴は僕が知っている女性の中でナンバーワンのかわいさと美しさを持っていました。  瑞貴のセーラー服姿。長い睫毛が瞳に落とすミステリアスな陰影。彼女の弾くピアノの美しい音色。その姿の高貴さ。──そんな一種近寄りがたい側面があるかと思えば、10歳も年の離れた兄貴を「たくみぃー」と呼んで慕って来る愛らしさと生意気さ。人前で私に抱きついて頬にキスしてくる唐突さ。――どれをとっても他の女性の追従を許さぬ魅力に溢れていたのです。  そうそう、彼女とキミは好みが近いんですよ。彼女はドビュッシーやラヴェルなどのフランス物が好きでねえ。先学期、授業でイギリス文学とフランス印象派との関係を説明したとき、キミの目が輝いたのが見えた。その時から、キミともっと近づきたいと思ってたんだ。きっと瑞貴ともいい友達になれるんじゃないかってね」  そうか。それで私だったのか。突然の大雨に見舞われた日、先生が偶然通りかかったことにより始まったのではなく、初めから標的にされていたのか。  なんて光栄なんだろう。先生は私の内面を見ていてくれたのだ。嬉しい。私は選ばれたのだ。だからこそ、クモの糸は私の頭上に降りて来たのだ。考えてみれば、あの夢にはそれ以降起こったすべての出来事が凝縮されているのだった。あの夢で私は先生に挿入されている。ということは現実でもそういうことが、あるいは、それと似たことが起こるということではないのだろうか。  先生はきっと私の中に入って来る!
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